January 30, 2005

◆『維持可能な水資源開発への努力』

リバーポリシーネットワーク様からお知らせ頂きました。以下転載させて頂きます。
昨年の『ダム撤去』国際シンポジウムに海外ゲストとして参加していただいた元陸軍工兵隊の最高幹部ジェームス・F・ジョンソン博士から今日メールが届きました。もちろん3月の「アメリカ・ダム撤去視察ツアー」に関することです。
「陸軍工兵隊との直接の接触はもちろんアレンジできてるから、早く名簿が必要だよ」という連絡でした。工兵隊の設備をあちこち見せてもらえるそうです。これはすごいことです。
つまり、今まではあり得なかった所まで見せてもらえる可能性があるのです。もちろんNGOとの面談も重要ですが、工兵隊はすごく重要ですし、民間の団体がこんなところまでアレンジできるなんて普通はあり得ないことです。
こんな機会はまたとないことです。是非、この機会を大いに活用してください。
”アメリカのダム撤去視察ツアー”にみんなで行こう!

「アメリカ・ダム撤去視察ツアー」のお申し込みは↓
http://www.mm289.com/RPN/1192/050320.html

◆それでは、ここで昨年の12月に作成したジェームス・F・ジョンソン博士のレポート『維持可能な水資源開発への努力』を少しご紹介します。彼がどれだけ重要な人物かおわかりいただけると思います。(尚、レポートの申し込み方法は末尾に掲載)

『維持可能な水資源開発への努力』ジェームス・F・ジョンソン博士
(元陸軍工兵隊最高幹部)

背景
34年間に渡り、アメリカ陸軍工兵隊にて水資源開発の計画立案に携わってきた私は、1969年に全米環境政策法が施行されて以降、工兵隊が環境政策を進化させてきたのを直に体験してきた。1985年から98年まではバルチモア地区、その後、1998年から2003年まで陸軍工兵隊本部における計画・政策部長であった私は、工兵隊の水資源開発において連邦法と政策を実施していく責任者であった。
 このレポートは、アメリカ陸軍工兵隊の土木公共事業と、維持可能な水資源開発に向けての努力を検証したものである。そして、今回の「ダム撤去シンポジウム」に向けての参照例も提供している。

このレポートでは5つの論点について述べることにする。
1:陸軍工兵隊の公共事業とその任務の進化。
2:いかに連邦政府の水資源事業計画が進化したか。特に陸軍工兵隊に関したものはどうであったか。
3:陸軍工兵隊の公共事業を取り巻いた数々の対立や論議
4:何故、そしていかにして陸軍工兵隊は維持可能な環境開発を取り入れるようになったのか。
5:ダム撤去やダムの改造への具体的な応用例における、維持可能な水資源開発を勝ち得るため考慮しなければならない問題。

目次
○陸軍工兵隊による公共事業
   * 航行
   * 治水
   * ハリケーンや嵐による被害の軽減
   * 生態系の再生
   * 水力発電
   * 水の供給
   * レクリエーション
○連邦政府の水資源計画の進化
○水資源事業における対立や議論 (文中より抜粋)
その歴史を通して、陸軍工兵隊は対立や議論の的となってきた。この点に関してはアメリカ開墾局も同様であった。

およそ半世紀にも渡って大規模で野心的な事業は対立を引き起こしてきたし、そのような事業における議論は今日でもまだ続いている。例えば、「問題の多い水」というレポートが「全米野性生物連盟」と「タックスペイヤーズ・フォー・コモンセンス」という団体から2000年3月に発行されている。これらは事業の選択という観点から考えることもできるが、結局のところ、今では多くの人々が環境に関心を払っていることがうかがえるだろう。このレポートが指摘していることは以下のようである。

1:陸軍工兵隊はいまだに連邦政府機関の中で最も国家の環境に被害を与えている。
2:工兵隊の公共事業は改善はされてはきたが、その多くがまだ被害を引き起こす事業を継続中である。
3:レポート中のリストにおける25の事業を中止すれば60億ドルの節約となり、深刻な環境破壊を防ぐことができるであろう。

リストに挙げられた事業は環境保護推進派のグループや一般市民に対して法律的な懸念を巻き起こしている。このような事業の中でも最悪のものは工兵隊がまだ環境にあまり配慮していない頃の遺物である。残念なことにこのような事業でも、アメリカの議会を含む強力な利害グループの影響で継続されているのである。このような議論の的となるような事業を工兵隊が自ら排除するか、あるいは環境に対する悪影響を実質的に削減するために事業を修正して意味のあるものにしていくかしなければ、工兵隊は今後もさらに対立に巻き込まれることになっていくであろう。

○陸軍工兵隊の維持可能な環境政策
  * ナパ川、カリフォルニア:生態系の再生と治水
  *  メリーランド州、ポプラー島:生態系の再生と航行
  *  エバーグレードの総合再生計画
○ミシシッピ川上流とイリノイ川の航行調査
○ダム撤去における陸軍工兵隊の関与
○維持可能な環境開発:問題と観察
  
* 目標と目的 (文中より抜粋)
維持可能な開発はとても重要でたどり着くには遠い目標である。そしてこれは簡単に理解できたり、適用できるような概念ではない。これを達成するためには、あらゆる範囲に渡る流域の使途や機能の代替案と、またあらゆる関係者たちの意見を反映した目標や目的を考える必要があるのだ。経済と環境の価値のバランスの良い事業を達成するためには、あらゆる関係者がその立場上のこだわりを捨て、「ギブ・アンド・テイク」の必要性を理解する必要がある。

ダム撤去事業はまた、さらに多くの関係者の多くの努力を必要とするもので、少なくとも、そのダムがまだ恩恵を提供し続けている、もしくは撤去の費用が大きなものになる時はそれが重要である。そのようなケースではダム撤去は新しい事業提案として扱われることが重要であり、事業の規模や目的と釣り合いの取れたレベルでの調査を含んだ総合的な費用便益分析がなされるべきである。

  * 科学と技術
  * 分析用ツールと技術
  * 政府と機関的制約
  * 一般市民の関わり、協調と協力
  * 資金

○まとめ
私は今回のシンポジウムに参加しながら、日本のいくつかの県を旅し、直に古い資源開発と新しい水資源開発を見る機会に恵まれた。そして、市民や関係者、行政官にも会うことができた。日本は豊かな自然に恵まれているが水生や地表の生態系は広範に渡る水資源開発により被害を受けている。アメリカと同じように日本でも市民、関係者と行政は、経済と環境の価値におけるバランスを取れる水資源開発の代替案を明確にし、実施する事を追求しなければならない。私は実際にこの目でいくつかの事において政府機関と関係者との協力関係を見てきたが、まだそれがなされていないところもある。我々がもし全ての関係者の利益と価値を反映できるような優れた科学的分析に基づいて健全な意志決定に至るために協力して働けないのなら、我々は維持可能な水資源開発を勝ち得ることはできない。そして、ダム撤去においてもまさしくそのアプローチが必要なのである。

Posted by harurin at 10:29 P | from category: 環境ニュース | TrackBacks
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